トランプ政権が誕生しているように世界が「ポピュリズム(大衆迎合政治)」に大きく舵を切っています。今後もこの政治の流れは続いていくのではないでしょうか。今回は「ポピュリズム」について深堀してみたいと思います。
ポピュリズム(大衆迎合主義)とは?
ポピュリズムとは、政治指導者が一般大衆の一面的な欲望や不安、恐れなどに迎合し,大衆を操作することによって権力を維持する政治手法です。数に勝る大衆の支持のもとに既存のエリート主義である知識人など対立する政治構図をともないます。日本語では大衆主義や人民主義、大衆迎合主義とも呼ばれます。
ポピュリズムは、エリートの腐敗や一向に変わらない現状を打破する突破力を持つという点では、改革のエネルギーとなる政治体制となりえますが、指導者が大衆の欲望や不安、恐れなどを大きくあおり権力の維持に乱用されれば、民主政治が衆愚政治に堕落し、自由の破壊や集団的熱狂に向かう危険性をはらんでいます。
2016年はポピュリズムの嵐だった
2016年の世界政治を象徴する出来事は「トランプ氏が米大統領選を制したこと」と「英国のEU離脱」でしょう。
不動産王のトランプ氏は、「メキシコから移民が入らないように壁をつくる」などと人種差別的な発言を繰り返した人物で、民主主義国家であるアメリカがトランプ氏を選ぶとは誰もが予想しなかったことでしょう。
格差の弊害
また、この大統領選の結果は、アメリカがどれだけ傷んでいるのかも表したものだったのではないでしょうか。世界一の経済界国アメリカですが、富は一部の裕福層に集まっています。急速なグローバル化が進む中、製造業などの空洞化が進み、アメリカを支えてきた中間層が没落しつつあります。
共和党の支持層
本来、共和党支持者は中産階級から上の富裕層が多く、アメリカの伝統的なキリスト教を受け継いでいる白人が多のが特徴です。逆に民主党支持者は、中産階級から下の貧しい人たちが多く、移民してきた人たちや有色人種の人たちや女性の支持が多いのが特徴です。共和党のトランプ氏が大統領選を制した背景には、経済界から多額の選挙資金が流れていたクリントン氏への批判と、トランプ氏の現在の政治を否定するポピュリズムが見事にマッチしたからではないでしょうか。
EU離脱
英国のEU離脱も世界に衝撃を与えました。背景には「移民が仕事を奪っている」という大衆の感情的な訴えです。ポピュリズムの波は英国だけでなく欧州全土に広がっています。イタリアでは首都ローマの市長選で、反EU派の女性候補が勝利しています。フランスのオランド大統領が次期大統領選挙への出馬を断ったのも、国内が極右化していることが背景にあるようです。
今度もポピュリズムに注目
今後もこの流れは続きそうで、民主政治が衆愚政治に堕落しないように我々市民が目を光らせておかなくてはなりません。各国で極右の流れが進む中、日本もかつてのように極右化しないよう現状をしっかりと見ておかなくてはなりません。巧みに情報を操作して、真実が隠されてしまうこともあります。
ロシアと中国の動きにも注意が必要ではないでしょうか。欧州や米国が失速する中、強権的な指導者がリードするロシアと中国が世界の中で存在感を増してきています。
強権的な国家の台頭と、各国で広がるポピュリズムや極右化の傾向から懸念されるのが、武力での衝突。今でも世界中で戦争や紛争、テロが頻発しています。世界がポピュリズムの酔いからさめるよう祈ります。
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